社会保険労務士試験・雇用保険法の過去問の解説です。テーマは「教育訓練給付金の支給額」です。この分野からは過去に令和4年選択式E、平成25年択一問4選択肢エ、平成21年択一問6選択肢B、平成19年択一問5選択肢C,D、平成16年択一問6選択肢C、平成13年択一問6選択肢Eで出題されています。
1.社労士過去問分析
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重要論点チェックテスト
「教育訓練給付金の支給額」については、次の論点を押さえておくとよいでしょう。それぞれの質問をクリック(タップ)すると回答を見ることができます。
- Q教育訓練給付金の額として算定された額が5,000円であれば支給されますか?
- A
はい。教育訓練給付金の額として算定された額が4,000円を超えない(小数点以下切り捨て)、つまり4,000円以下の場合は支給されません。4,001円以上(小数点以下切り捨て)で支給されます。
- Q一般教育訓練給付金の上限は?
- A
一般教育訓練給付金は教育訓練経費の20%、上限は10万円です。ただし、受講料は最大1年分まで。
- Q特定一般教育訓練給付金の上限は?
- A
特定一般教育訓練給付金は教育訓練経費の40%、上限は20万円です。
- Q専門実践教育訓練給付金(追加給付ではない)の上限は?
- A
専門実践教育訓練給付金は教育訓練経費の50%、年間上限40万円、3年で上限120万円。支給限度期間10年間の上限120万円。4年目の上乗せがある場合は160万円。
社労士試験について
社会保険労務士試験について詳しくはこちらの記事をご覧ください。
2.令和4年選択式E
令和4年(2022年実施、第54回)社労士試験、選択式試験・雇用保険法のEです。
問題
選択式試験・雇用保険法(Eのみ抜粋) 次の文中の[ ]の部分を選択肢の中の最も適切な語句で埋め、完全な文章とせよ。 (雇用保険法第60条の2に規定する教育訓練給付金に関して) 同条第5項及び同法施行規則第101条の2の9において、教育訓練給付金の額として算定された額が [ E ] ときは、同給付金は支給しないと規定されている。
空欄 [ E ] の選択肢
(1) 2,000円を超えない (2) 2,000円を超える (3) 4,000円を超えない (4) 4,000円を超える
正解
空欄Eは「4,000円を超えない」が正解です。教育訓練給付の問題が選択式試験で出題されたのは2015年(平成27年)以来で、8年ぶり2回目となります。
解説
教育訓練給付金の額として算定された額(=教育訓練経費に20%~70%の給付率をかけて小数点以下を切り捨てて整数にした額)が「4,000円を超えない」ときは支給されません。このことは一般、特定一般、専門実践の種別を問いません。
「4,000円を超えない」とは4,000円以下のことです。
消費税込みの教育訓練経費×給付率の掛け算をしてさらに小数点以下切り捨てをした値が4,001円以上となれば給付されます。一般教育訓練給付金は教育訓練経費が20,005円以上(税込み)の場合に対象となります。
3.平成25年択一問4選択肢エ
平成25年(2013年実施、第45回)社労士試験、択一式試験・雇用保険法問4の選択肢エです。
問題
択一式試験・雇用保険法(選択肢エのみ抜粋) 〔問 4〕教育訓練給付に関する次のアからオの記述のうち、誤っているものの組合せは、後記AからEまでのうちどれか。 なお、本問において、「教育訓練」とは「雇用保険法第60条の2第1項の規定に基づき厚生労働大臣が指定する教育訓練」のことである。 エ 教育訓練給付金の額として算定された額が5,000円となるときは、教育訓練給付金は、支給されない。
正解
選択肢エの記述は誤りです。
解説
教育訓練給付金の額
教育訓練給付金の額は、教育訓練の受講のために支払った費用(教育訓練経費)に20%~70%の給付率をかけて求めます。
教育訓練経費には消費税を含みます。教育訓練経費に給付率をかけて小数になった場合は小数点以下を切り捨てて整数にします。
下限は4,001円
教育訓練給付金の額として算定された額(小数点以下を切り捨てて整数にした額)が4,000円を超えないときは支給されません。「4,000円を超える」とは4,001円以上のことです。
4,000円を超えなければ支給されないので、教育訓練給付金の額がちょうど4,000円となるときは支給されません。教育訓練給付金として支給される額の下限は4,001円です。
このことは雇用保険法第60条の2第5項、雇用保険法施行規則第101条の2の9に規定されており、選択肢エの「5,000円となるときは、教育訓練給付金は、支給されない」とする記述は誤りです。
4.平成21年択一問6選択肢B
平成21年(2009年実施、第41回)社労士試験、択一式試験・雇用保険法問6の選択肢Bです。
問題
択一式試験・雇用保険法(選択肢Bのみ抜粋) 〔問 6〕教育訓練給付に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。 なお、この問において「教育訓練」とは雇用保険法第60条の2第1項の規定に基づき厚生労働大臣が指定する教育訓練とし、「教育訓練の受講のために支払った費用」とは雇用保険法第60条の2第4項に規定する厚生労働省令で定める範囲内のものとする。 B 支給要件期間15年の者が教育訓練の受講のために支払った費用が30万円である場合、受給できる教育訓練給付金の額は6万円である。
正解
選択肢Bの記述は、一般教育訓練給付金の記述としては正しいです。
解説
一般教育訓練給付金は2割
支給要件期間3年以上の教育訓練給付対象者が一般教育訓練を修了した場合、一般教育訓練給付金として、教育訓練の受講のために支払った費用(教育訓練経費)の20%が支給されます。
教育訓練経費が30万円の場合、一般教育訓練給付金の額として算定される額は6万円(30万円×20%)となります。
上限10万円、下限4001円
一般教育訓練給付金の額として算定される額が10万円を超えるときは、支給される額は10万円となります。また、教育訓練給付金の額として算定された額が4,000円を超えないときは支給されません(特定一般、専門実践も同じ)。4,001円以上の時に支給されます。
したがって、一般教育訓練給付金の額として算定される額が6万円の場合、6万円支給されますので、選択肢Bの記述は正しいと言えます。
5.平成19年択一問5選択肢C
平成19年(2007年実施、第39回)社労士試験、択一式試験・雇用保険法問5の選択肢Cです。
問題
択一式試験・雇用保険法(選択肢Cのみ抜粋) 〔問 5〕教育訓練給付に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。 なお、本問において「教育訓練」とは、雇用保険法第60条の2第1項の規定に基づき厚生労働大臣が指定する教育訓練とし、「教育訓練の受講のために支払った費用」とは、雇用保険法第60条の2第4項に規定する厚生労働省令で定める範囲内のものし、教育訓練の開始日は平成15年5月1日以降とする。 C 支給要件期間が30年の者が教育訓練の受講のために支払った費用が60万円である場合、受給できる教育訓練給付金の額は20万円である。
解説
選択肢Cの記述は、出題当時(平成19年)は上限20万で正しかったですが、現在は誤りです。教育訓練経費が60万円の場合、一般教育訓練給付金は上限の10万円(60万×20%=12万)です。
6.平成19年択一問5選択肢D
平成19年(2007年実施、第39回)社労士試験、択一式試験・雇用保険法問5の選択肢Dです。
問題
択一式試験・雇用保険法(選択肢Dのみ抜粋) 〔問 5〕教育訓練給付に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。 なお、本問において「教育訓練」とは、雇用保険法第60条の2第1項の規定に基づき厚生労働大臣が指定する教育訓練とし、「教育訓練の受講のために支払った費用」とは、雇用保険法第60条の2第4項に規定する厚生労働省令で定める範囲内のものし、教育訓練の開始日は平成15年5月1日以降とする。 D 支給要件期間が3年の者が教育訓練の受講のために支払った費用が5万円である場合、受給できる教育訓練給付金の額は1万円である。
解説
教育訓練経費が5万円の場合、一般教育訓練給付金は2割の1万円です。選択肢Dの記述は正しいです。
7.平成16年択一問6選択肢C
平成16年(2004年実施、第36回)社労士試験、択一式試験・雇用保険法問6の選択肢Cです。
問題
択一式試験・雇用保険法(選択肢Cのみ抜粋) 〔問 6〕教育訓練給付に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。 なお、本問において一般被保険者とは、高年齢継続被保険者、短期雇用特例被保険者及び日雇労働被保険者を除いた被保険者をいう。 C 支給要件期間が4年の者の場合、教育訓練給付金の上限額は10万円である。
解説
上記のとおり、一般教育訓練給付金の上限は10万円なので選択肢Cの記述は正しいと言えます。
8.平成13年択一問6選択肢E
平成13年(2001年実施、第33回)社労士試験、択一式試験・雇用保険法問6の選択肢Eです。
問題
択一式試験・雇用保険法(選択肢Eのみ抜粋) 〔問 6〕教育訓練給付に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。 E 教育訓練給付金の対象となる入学金及び受講料の合計額の80パーセント相当額が8,000円を超えない場合、教育訓練給付金は支給されない。
解説
上記の、雇用保険法施行規則第101条の2の9に規定されているとおり、教育訓練給付金の種類にかかわらず、算定された額が4,000円を超えない場合、教育訓練給付金は支給されません。したがって、選択肢Eの記述は誤りです。