教育訓練支援給付金の失業認定を受けるには出席率が8割以上必要です。ただし、感染症に感染した場合の出席停止などやむを得ない欠席は、出席すべき日から除外して計算します。
1.出席率8割以上の理由
教育訓練支援給付金は「失業していることについての認定を受けた日」について支給されます(雇用保険法附則第11条の2第1項)。「失業」とは、労働の意思及び能力を有するにもかかわらず、職業に就くことができない状態にあることをいいます(雇用保険法第4条第3項)。
教育訓練支援給付金の場合は、専門実践教育訓練を適切に受講することで、「労働の意思及び能力を有する」と判断されるので、受講状況が悪ければ失業不認定となります。そのため、出席率が悪ければ失業とは認められません。
原則として失業認定の対象となる支給単位期間(2か月)に、専門実践教育訓練を受講した日が開講日数の8割以上(80%以上)確認できた場合に失業認定が行われます。
出席率が8割未満(79%以下)となった支給単位期間は、その期間全部について失業不認定となり、教育訓練支援給付金が不支給となります。また、それ以降の期間も全部不支給となります。
2.出席率の計算方法
出席率は、出席日数を訓練実施日数で割った数に100をかけます。小数点以下切り捨てです。四捨五入ではないので注意してください。
出席率(%) = 出席日数 ÷ 当該者が出席すべき訓練実施日数 × 100
祝祭日など授業が行われない休日は計算には含まれません。例えば、支給単位期間(2か月)で訓練実施日数(授業のあった日)が40日あり、そのうち3日欠席した場合、出席日数37日、出席率92%となり、出席率8割以上をクリアしています。
出席率(%) = 出席37日 ÷ 授業日数40日 × 100 = 92(%) 小数点以下切り捨て
欠席がやむを得ない理由があったとしても、理由を問わず「欠席」として出席率の計算を行います。どんな事情があっても欠席は欠席です。忌引きも公欠も認められません。冠婚葬祭などのやむを得ない欠席をふまえたうえでの「8割」です。
ただし、感染症に感染した場合などの出席停止は、「出席すべき日から除外できる欠席」として計算します(後述)。
3.半日出席、遅刻、早退の扱い
出席か欠席かの判断は1日ごとに行います。1日のうち半分未満の出席は、その日全部欠席したものと扱います。
半日の受講
開講日における訓練の2分の1以上に相当する部分を受講した場合は、0.5日受講したものとして計算します。2分の1未満の場合は「1日欠席」として扱います。
出席日数 = 全日出席した日数 +(2分の1以上出席した日数 × 0.5)
「2分の1以上に相当する部分」とは、1日の訓練時間の2分の1以上を出席することです。具体的な算定にあたっては、1日の訓練カリキュラムにおける総時限数(総コマ数)のうち、半分以上の時限(コマ)に出席したことが必要となります。
例えば、1日の訓練カリキュラムが6時限ある場合、そのうち3時限以上出席すれば半日出席(0.5日出席)となります。2時限以下の場合はその日は欠席(0日出席)したものとして計算します。
なお、半日出席を加えた出席日数の合計に端数が出た場合には、小数点以下を切り捨てます。
例えば、全日出席35日、半日出席3日の場合、35+1.5=36.5日
小数点以下切り捨てで出席日数は36日
時限の遅刻、早退は欠席扱い
時限(コマ)の「出席」は、その時限内のすべての時間に出席していたことが必要です。そのため、遅刻・早退等のため当該時限の全部に参加していなかった場合は、当該時限は欠席したものとして計算します。
例えば、6時限のうちの3時限目の途中から出席した場合(遅刻)、3時限目は欠席、4時限目以降が出席となります。この場合、ちょうど半分の時限数を出席しているので半日出席(0.5日出席)となります。4時限目の途中から出席した場合、5時限目以降が出席扱いとなりその日は欠席(0日出席)となります。
なお、感染症等のため当該時限を遅刻・早退等しなければならない場合、当該時限はやむを得ない欠席(出席すべき日から除外できる欠席)となります。
4.出席すべき日から除外できる欠席
欠席をした場合はどのような理由であっても出席とはなりませんが、単なる欠席と取り扱うことが受講者にとって酷な扱いとなる場合は、教育訓練実施日から除外することができます。
出席すべき訓練実施日数から除外する日
- インフルエンザ等に感染した場合等
- 大規模な災害が起こった等により訓練実施施設への通所が困難となっている場合
- 裁判員等に選任された場合等
- 教育訓練支援給付金制度上、訓練受講より優先される場合
欠席理由の確認は教育訓練施設が行います。出席すべき日から除外できる欠席をした受講生は、教育訓練施設に対して、欠席理由を確認できる書類を提出します。
出席率の計算方法
出席停止であってもあくまで「欠席」なので出席日数が増えることはありません。「出席すべき訓練実施日数」から当該欠席した日数を引きます(分母を減らす)。つまり、教育訓練が実施されなかった休日と考えます。なお、訓練実施日の2分の1以上に相当する部分を出席した場合には、0.5日出席したものと取り扱います。
出席率 = 出席日数 ÷ (当該者が出席すべき訓練実施日数-欠席した日数)×100
例えば、支給単位期間(2か月)で訓練実施日数が40日あり、そのうち31日出席、感染症で7日出席停止、その他の理由で2日欠席した場合、授業日数を7日減らして計算します。授業日数33日、出席日数31日、出席率93%となり、出席率8割以上をクリアしています。
出席率 = 出席31日 ÷ (授業日数40日-7日)×100 = 93(%) 小数点以下切り捨て
インフルエンザ等に感染した場合
インフルエンザ等の感染症に感染した場合、訓練の受講により他の受講者に多大な影響を与えるなど公衆衛生の観点から欠席を求める必要があることから、訓練実施日から除外して出席率を計算します。
次のような場合、感染症を理由として欠席した日を訓練実施日から除外することができます。
感染症を理由とする欠席
- 本人が感染症に感染した場合
- 本人の親族または本人の同居人が感染症に感染し、医師または担当医療機関関係者が本人も含む親族または同居人の自宅待機が必要と判断した場合
- 企業実習先において本人以外の者が感染症に感染し、本人が訓練を受講できなかった場合
なお、感染症に感染したことにより、専門実践教育訓練の受講を途中で終了した場合(=修了することができなかった場合)、修了の見込みが無くなったものと扱われます。つまり、その終了した日を含む支給単位期間については教育訓練支援給付金が支給されません。
対象となる感染症
対象となる感染症は、学校保健安全法施行規則第18条に規定される感染症です。
エボラ出血熱、クリミア・コンゴ出血熱、痘そう、南米出血熱、ペスト、マールブルグ病、ラッサ熱、急性灰白髄炎、ジフテリア、重症急性呼吸器症候群(SARS)、中東呼吸器症候群(MERS)、特定鳥インフルエンザ(H5N1、H7N9)、インフルエンザ、百日咳、麻しん(はしか)、流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)、風しん(三日はしか)、水痘(みずぼうそう)、咽頭結膜熱(プール熱)、結核、髄膜炎菌性髄膜炎、コレラ、細菌性赤痢、腸管出血性大腸菌感染症(O157)、腸チフス、パラチフス、流行性角結膜炎、急性出血性結膜炎、その他の感染症(※)、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律第6条第7項から第9項までに規定する新型インフルエンザ等感染症、指定感染症、新感染症
※その他の感染症(例:感染症胃腸炎(主な病原体:ロタウイルス、ノロウイルス等)、マイコプラズマ感染症、急性細気管支炎等)
新型コロナウイルス感染症も含まれる
新型コロナウイルス感染症は「新型インフルエンザ等感染症」に含まれるので、訓練実施日から除外すべき欠席に該当します。
感染症の確認書類
感染症を理由として欠席した場合、本人が訓練施設に次の書類をすべて提出します。ただし、インフルエンザのように、処方された医薬品名から特定の感染症に感染したものであることが判別できる場合にはいずれかの書類を提出すればよいです。
提出書類(写しでも可)
- 医療機関又は調剤薬局の領収書
- 処方箋袋(薬袋)
- 薬剤情報提供書(医療機関又は調剤薬局からの処方箋袋(薬袋)とともに渡される調剤日、薬剤の名称、用法、用量、効能、効果、相互作用に関する主な情報が記載された用紙)
- 診療明細書
さらに、同居人が感染症に感染し、医師等から本人を含む同居人の自宅待機が必要と判断された場合には、感染症に感染したことまたは医師等から自宅待機を指示されたことにより訓練を欠席したことの「申告書」を提出します。また、同居していることを証明するため、本人確認書類に準じた確認書類、住民票の写しも提出します。
親族とは
親族とは、民法第725条に規定する親族、すなわち6親等以内の血族、配偶者及び3親等以内の姻族をいいます。
企業実習が実施されなかった場合
企業実習先において本人以外の者が感染症に感染したため、本人が訓練を受講できなかった場合は、教育訓練施設が教育訓練支援給付金受講証明書にその旨を記載して証明しますので、上記確認書類の提出は不要です。
また、教育訓練施設は「感染症の発生により専門実践教育訓練の企業実習が実施されなかったことの経緯書」を作成します。
大規模災害等により訓練実施施設への通所が困難である場合
大規模災害等が発生することは事前に具体的に想定することができず、本人の努力のみでは解決困難であるため、訓練実施日から除外して出席率を計算します。
大規模な災害が起こった等により訓練実施施設への通所が困難である場合とは、当該地域一帯が災害等の影響によって交通機関の運行が終日ストップする、局地的な災害ではあるが、交通が遮断されるなど回復するために1日以上の時間が必要となるなど、当該実施日において教育訓練施設に通所することが困難となる場合をいいます。
人身事故や交通事故で一時的に交通機関の運行がストップする場合など一時的な事象は含みません。
裁判員等に選任された場合等
裁判員等に選任された場合等は訓練を欠席してもやむを得ないものであり、かつ本人の努力で避けることができないため、訓練実施日から除外して出席率を計算します。
裁判員等に選任された場合等とは、他の法律による裁判への参加や出廷(裁判員又は補充裁判員、刑事又は民事訴訟手続きにおける証人等)並びに裁判員候補者としての裁判員等選任手続の期日における裁判所への出頭、国会への招致がこれにあたります。
教育訓練支援給付金制度上、訓練受講より優先される場合
ハローワークとの関係で、訓練の受講より優先した対応を求められる場合は訓練を欠席してもやむを得ないので、訓練実施日から除外して出席率を計算します。
訓練受講より優先される場合
- 基本手当の失業の認定日、教育訓練給付金の支給申請または教育訓練支援給付金の失業の認定日にハローワークに来所する必要がある場合
- ハローワークの指導により求職活動を行う場合
- ハローワークの紹介に応じて求人者に面接する場合
- 職業紹介事業者である教育訓練施設の指導により求職活動を行う場合
- 職業紹介事業者である教育訓練施設の紹介に応じて求人者に面接する場合
5.感染症の場合の失業認定
「出席すべき日からの除外」と「失業認定」とは異なります。出席すべき日から除外されたとしても、その日について失業が認定されるとは限りません。
自己都合でない場合(大規模な災害が起こった等により訓練実施施設への通所が困難となっている場合、裁判員等に選任された場合等、訓練受講より優先される場合)は、欠席した日も失業認定となります。つまり給付金は支給されます。
しかし、疾病または負傷(感染症も含む)により訓練に出席できなかった場合やハローワークに出頭できなかった場合で、14日以内に治癒したときは、欠席した日について不認定となります。
また、感染症に感染した期間が15日以上の場合は、その期間中すべてが不認定となります。
感染症20日間欠席の例
支給単位期間が2/1~3/31(失業認定日は4/5)で、このうち2/6~2/25の20日間感染症のため欠席した場合 ※うるう年ではないものとします
支給単位期間が2/1~3/31の2か月間で、その失業認定日が4/5である場合、4/5にハローワークに出頭して、2/1~3/31の2か月間についての失業認定を受けます。
2/6~2/25の20日間感染症に感染した場合、この期間中の欠席した日(開講日)は出席すべき日数から除外することができます。出席すべき日から除外して出席率が8割であればこの期間についての失業認定が行われます。しかし、14日以内に治癒していないので感染した20日間はすべて失業不認定となります。
したがって、4/5の認定日に失業認定される日数は39日(2/1~3/31の59日間のうち20日不認定)となります。
2つの支給単位期間にまたがる例
支給単位期間2/1~3/31(失業認定日は4/5)、その次の支給単位期間4/1~5/31(失業認定日は6/5)で、このうち3/17~4/5の20日間感染症のため欠席した場合
感染症に感染した期間が3/17~4/5の20日間である場合、4/5の失業認定日は感染症のため不出頭となります。不出頭の場合は失業認定されません。この場合、事前に連絡して失業認定日を変更してもらう必要があります。
その次の6/5の認定日に失業認定される日数は56日(4/1~5/31の61日間のうち、4/1~4/5の5日不認定)となります。