求職者支援訓練は、求職者支援法によって法制化された求職者支援制度において実施される職業訓練です。雇用保険を受給できない特定求職者に対して、できる限り早期に、より安定した職業生活に移行できるよう、必要な技能と知識を付与することを目的としています。
1.求職者支援法と求職者支援訓練
求職者支援制度
求職者支援制度は、職業訓練の実施等による特定求職者の就職の支援に関する法律(求職者支援法)に基づき、雇用保険を受給できない求職者(自営業の廃業者、未就業者、雇用保険の受給が終了した方など)の早期再就職を支援するために設けられた総合的な仕組みです。この制度は、主に以下の3つの要素で構成されています。
- 求職者支援訓練:民間の教育訓練機関等で無料受講できる実践的な職業訓練
- 職業訓練受講給付金:一定の要件を満たす場合に支給される生活支援金(月10万円+交通費等)
- ハローワークの就職支援:定期的なキャリアカウンセリングや求人案内
- 特定求職者、求職者支援制度の概要(特定求職者支援制度)
- 求職者支援訓練(求職者支援法に基づく認定職業訓練)
- 職業訓練受講給付金
求職者支援訓練
求職者支援訓練は、求職者支援制度という枠組みのなかで実施される講座(公的職業訓練)です。特定求職者は、厚生労働大臣の認定を受けた実践的な職業訓練を無料で受講することができます。訓練を修了することで、公的な職業訓練を受けた実績として履歴書や職務経歴書に記載することも可能です。
職業訓練の実施等による特定求職者の就職の支援に関する法律 第4条
厚生労働大臣は、職業訓練を行う者の申請に基づき、当該者の行う職業訓練について、次の各号のいずれにも適合するものであることの認定をすることができる。
一 職業訓練実施計画に照らして適切なものであること。
二 就職に必要な技能及びこれに関する知識を十分に有していない者の職業能力の開発及び向上を図るために効果的なものであること。
三 その他厚生労働省令で定める基準に適合するものであること。
2 厚生労働大臣は、前項の認定に係る職業訓練(以下「認定職業訓練」という。)が同項各号のいずれかに適合しないものとなったと認めるときは、当該認定を取り消すことができる。
3 厚生労働大臣は、第一項の規定による認定に関する事務を独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(以下「機構」という。)に行わせるものとする。
2.求職者支援訓練のコース
求職者支援訓練は、民間教育訓練機関(株式会社、医療法人、NPO法人、専門学校等)が厚生労働大臣の認定を受けた職業訓練を実施します。託児サービスを利用できる訓練コースもあります。
求職者支援訓練を探す
認定を受けた求職者支援訓練、開講予定の具体的なコース情報は、ハローワークインターネットサービス(ハロートレーニングコース情報検索)で検索することができます。
ハローワークインターネットサービス
https://www.hellowork.mhlw.go.jp/
基礎コースと実践コース
求職者支援訓練には、基礎コースと実践コースの2つのコースがあります。
- 基礎コース:社会人としての基礎的能力及び短時間で習得できる技能等を習得する訓練(2か月から4か月)
- 実践コース:就職希望職種における職務遂行のための実践的な技能等を習得する訓練(3か月から6か月)
原則として職業訓練を修了してから1年を経過する前に他の訓練を連続して受講することはできませんが、ハローワークが必要性を認める場合、基礎コースの直後に実践コースまたは公共職業訓練を連続して受講することができます。
基礎コース
基礎コースは、社会人としての基礎的能力やパソコン基本操作、短時間で習得できる技能等を習得する訓練で、訓練期間は2か月から4か月です。多くの職種に共通する基礎的能力を習得するためのコースであり、パソコンスキル、ビジネスマナー、コミュニケーション能力などを習得します。
- ビジネスマナー:電話対応、文書作成、ビジネスコミュニケーション、チームワーク演習
- パソコン基本操作:Windowsの基本操作、Word(文書作成)、Excel(表計算・グラフ)、PowerPoint(プレゼンテーション資料作成)の基礎
- キャリアデザイン:これまでの経験の棚卸し、自己分析、適性把握、就職活動の進め方、ジョブカード作成
- 職業人講話:企業経営者や人事担当者を招いた業界動向・求められる人材像についての講義
実践コース
実践コースは、就職希望職種における職務遂行のための実践的な技能等を習得する訓練で、訓練期間は3か月から6か月です(コースによっては最長1年)。
基礎的なパソコン操作ができることを前提に、基礎的能力と特定の職種の職務遂行に必要な専門知識および実践的技能を一括して習得するためのコースであり、特定の職種(IT、介護、WEBデザイン、医療事務、建築など)で即戦力となるための専門知識・技能を習得します。
- IT系:Webデザイン、プログラミング(Python、Java、PHP)、アプリ開発、ネットワーク構築など
- 事務系:総務・人事・経理事務、宅建・不動産実務、貿易事務、営業販売など
- 医療事務:医療・介護事務科、調剤事務科など
- 介護福祉:介護職員実務者研修科、保育スタッフ養成科など
- デザイン系:グラフィックデザイン、広告・DTP、WEBデザイナー、動画編集など
- その他:CADオペレーター、ネイリスト、エステティシャン、農業、観光など
開講形式
求職者支援訓練では、多様な働き方への対応や学び直しの促進を目的として、週の訓練時間が短いコースや、1か月〜2か月の短期間で完結するコースが拡充されています。
- 通学型(対面授業):訓練校の教室に通い、講師や同期と対面で学習する標準スタイル。設備が整っており、直接質問しやすい環境。
- 短時間型:1日の授業時間を3〜4時間程度に抑え、育児・家事・介護、副業・パートと両立しやすく設計されたコース。
- 託児サービス付きコース:未就学児を持つ求職者のために、訓練校が近隣の保育施設等を確保・提携して提供するコース。
- 職場体験付きコース:一部のコースでは、座学訓練(2〜3ヶ月)の後に、企業での実習(1ヶ月程度)が組み込まれたコース(そのまま実習先企業への採用につながる)。
最近は、自宅等からインターネット経由で動画講義を受講し、チャットやZoom等で講師のサポートを受けるスタイルの「eラーニング型(オンライン授業)」のコースが多数認定されるようになり、地方在住者や育児・介護中の方、外出に制限がある方でも受講しやすい環境が整えられています。
3.受講費用は無料
求職者支援訓練の授業料(受講料)自体は完全無料ですが、以下の実費は自己負担となります。
- テキスト・教材代、各種検定・資格試験の受験料(概ね数千円〜3万円程度)
- eラーニングコースの場合、自宅のインターネット環境の通信費やパソコン端末(レンタル制度がない場合)
4.受講の手続とスケジュール
求職者支援訓練を受講するためには、ハローワークでの相談から始まり、所定の手続を経て訓練校による選考を通過する必要があります。
求職者支援訓練の手続き
職業相談と事前審査
・職業訓練の相談を受ける。
・職業訓練受講給付金の支給を受ける場合は事前審査を申請する。
受講申し込み
・訓練コースを選択し、受講の申し込みをする。
選考・訓練開始
・訓練実施機関で選考を受け、合格すれば受講することができる。
・ハローワークで就職支援計画書の交付を受ける。
・ハローワークで月に1回、職業相談を受ける。
訓練終了後
・終了後3か月間、ハローワークで職業相談を受ける。
事前相談
職業訓練受講給付金の支給を受けるか否かにかかわらず、求職者支援訓練はハローワークで申し込みます。
まず、原則として居住地を管轄するハローワークで求職登録を行って窓口で職業相談を受けます。現在までの職歴や希望する職種を伝え、求職者支援訓練の受講の必要性を確認します。職業訓練受講給付金の支給を受ける場合は世帯、収入、資産などの要件を満たしているかをあらかじめ審査します。
ハローワークの検索システムやパンフレットで希望するコースを選定します。訓練実施機関で開催される見学会(説明会)に参加し、授業内容や施設状況を確認します。
受講申し込み
訓練コースを選択し、受講の申し込みを行います。ハローワークで受講申込書を受け取り、必要事項を記入して提出します。職業訓練受講給付金を希望する場合は、収入や資産を証明する書類(課税証明書、住民票の写し、預貯金通帳のコピーなど)の確認・準備も同時に進めます。
選考・訓練開始
求職者支援訓練のコースはそれぞれ定員があるため、書類選考や面接・筆記試験で不合格になる場合があります。特に、人気のコース(Webデザイン、IT、オンラインコースなど)は倍率が2倍〜3倍以上になることもあり、確実に受講できるとは限りません。
訓練校での選考試験(筆記・面接)を受け、合格すれば受講できます。受講意欲や就職可能性が評価されます。
合格通知が届いたら訓練開始日の前日までにハローワークへ行き、「就職支援計画書」の交付を受けます。就職支援指示、受講指示を受けることで、正式に特定求職者として求職者支援訓練の受講が決定します。
訓練修了後
訓練校には有資格のキャリアコンサルタントが配置されており、訓練期間中に複数回の個別面談(個別キャリアコンサルティング)が実施されます。
訓練が修了した後もハローワークで月に1回、職業相談を受けます。通常3か月間、就職が決まるまで就職状況の追跡および継続的な就職支援が提供されます。修了直後に決まらなかった場合でも、訓練校のキャリアコンサルタントに相談を続けることが可能です。
- 前職までのキャリア整理と強みの抽出
- 応募書類(履歴書・職務経歴書)の添削
- 面接での自己PR・志望動機のブラッシュアップ
5.出席管理と修了要件
急な私用や安易な遅刻・欠席は認められず、一定の出席率を割ると強制退校や修了不可となる厳しさがあります。
求職者支援訓練では、厳格な出席管理が行われます。
- 修了要件:全訓練時間数の80%以上の出席が必要です。職業訓練受講給付金の受給者は100%の出席が必要です。
- 遅刻・早退の取り扱い:やむを得ない理由(冠婚葬祭、病気、ハローワークの就職活動等)であっても証明書(診断書やハローワークの証明書)の提出が求められます。
- 無断欠席・怠慢:理由のない欠席や著しく出席率が低い場合、中途退校処分(退校命令)となる場合があります。
6.補足
公共職業訓練(離職者訓練)との違い
ハロートレーニング(公的職業訓練)には求職者支援訓練のほかに、雇用保険受給者を主に対象とした「公共職業訓練(離職者訓練)」があります。雇用保険の適用の有無が異なります。
| 求職者支援訓練 | 公共職業訓練 | |
|---|---|---|
| 主な対象者 | 雇用保険を受給できない求職者 | 雇用保険(失業手当)を受給中の求職者 |
| 根拠法律 | 求職者支援法 | 雇用保険法、職業能力開発促進法 |
| 実施機関 | 認定を受けた民間の教育訓練機関(パソコン教室、専門学校等) | 職業能力開発校、ポリテクセンター等(一部民間委託あり) |
| 生活費支援 | 職業訓練受講給付金 | 雇用保険の基本手当、受講手当、通所手当 |
求職者支援訓練と認定職業訓練の違い
求職者支援訓練は、民間の教育訓練機関の申請に基づき、求職者支援法第4条の基準に適合する職業訓練として、厚生労働大臣の認定を受けた職業訓練であり、正確には「求職者支援制度における認定職業訓練」です。
なお、「求職者支援制度の認定職業訓練」と「職業能力開発促進法の認定職業訓練」は異なります。厚生労働省はこれらを区別するため、求職者支援制度における認定職業訓練を「求職者支援訓練」、職業能力開発促進法における認定職業訓練を「認定職業訓練」と呼んで区別しています。
- 求職者支援訓練:ハローワークが実施する求職者支援制度における職業訓練(求職者支援法)
- 認定職業訓練:事業主や事業主の団体が従業員などに対して行う職業訓練(職業能力開発促進法)
| 用語 | 求職者支援訓練 |
| 読み | きゅうしょくしゃしえんくんれん |
| 正式名称 | 求職者支援制度における認定職業訓練(職業訓練の実施等による特定求職者の就職の支援に関する法律第4条) |
| 英語 | Job seeker support training |
| 関連用語 | 求職者支援制度 職業訓練受講給付金 |
- 特定求職者、求職者支援制度の概要(特定求職者支援制度)
- 求職者支援訓練(求職者支援法に基づく認定職業訓練)
- 職業訓練受講給付金


