各種会社の外務員、外交員等は通常、会社に所属して活動を行い、その成果に応じて報酬を受けています。その活動の根拠となる契約が雇用であれば労働者であり、委任であれば労働者ではありません。
1.外務員について
外務員とは
外務員(がいむいん)とは、生命保険会社、損害保険会社、証券会社、金融会社、商社等に所属して、企業や一般家庭を訪問して商品の内容を説明し、契約の締結を勧誘する営業職員のことです。外交員、勧誘員、営業員ともいいます。
外務員、外交員等の契約の中には雇用ではなく、委任または請負契約の形式がとられ、会社が全く統制せず、活動のすべてを外務員の自由に委ねている場合があります。この場合は労働者ではありません。
しかし、「外務員だからすべて適用除外」という意味ではなく、所属する会社に勤務を管理され、勤務実態で判断して雇用関係が明らかであれば、雇用される労働者なので被保険者となります。
委任と雇用の違い
委任(いにん)は、外務員を信頼して営業活動を委託し、会社が行うべき勧誘や契約の媒介を外務員に任せる契約です。成績に応じて報酬や経費が支払われ(歩合制、出来高払)、労働時間や労働場所についての拘束が少なく、就業規則の適用が排除されます。委任契約による仕事をしてその報酬を得る人は、雇用される労働者ではない(個人事業主、自営業)ので、雇用保険の対象外です。
雇用は会社と外務員の間に従属的関係があります(会社が管理する)が、委任は外務員に自由な裁量があり、独立して活動をします。
2.外務員の労働者性を判断する基準
労働者性の判断
雇用保険に加入できるのは雇用されている労働者だけです。個人事業主のように、他人から業務を請け負って独立して仕事をしている場合は「雇用」ではないので、労働者ではありません。
実態として労働者として勤務していると認められる場合は労働者として扱われます。これを「労働者性がある」といいます。雇用されていることが明確でない人については、個別に労働者性を判断します。
労働者性が認められる条件
雇用関係が明確である場合は被保険者となります。雇用関係が明確であるためには、少なくとも次の条件をすべて満たしていることが必要です。
雇用関係が明確である条件
- 固定給が支給されること
- 就業規則があること
- 出勤義務があること
- 職務の内容及び服務の態様について、事業主の支配と指揮監督を受けて、その規律のもとに労働を提供し、それに基づいて給与が算出されている
- 会社に対する損害や成績不良につき一般社員と同様な何らかの制裁を受ける
雇用関係が明確に存在していない場合は被保険者となりません。
例えば、「出勤」と称しても、受任者としての報告、受取物引渡しとみなされれば雇用ではありません。また、固定給的報酬を受けていても、委任関係に基づく報酬の一部とみなされれば雇用ではありません。
3.生命保険会社の外務員
生命保険会社の外務員(保険外交員)は、その職務の内容、服務の態様、給与の算出方法等からみて雇用関係が明確でないので、通常は被保険者となりません。
ただし、次の生命保険外務員については、雇用関係が明確であると認められるので、これらの事業主または労働者から申出があった場合は被保険者となります。なお、同一の会社組織に属する者については、同一の種類の外務員である限り、たとえ一部地方の実態が他の地方のそれと若干異なる場合があっても、統一的な取扱いをしなければなりません。
管理職
支部長その他機関長として所属外務員の出勤管理、契約募集業務の指導等の管理監督的業務に従事する者は、所属会社に従事する労働者です。
集金業務に特化した外務員
集金業務を主な仕事とする月掛外務員であって、出勤義務が課され、毎月の賃金額が安定している者は、所属会社に従事する労働者です。月掛外務員とは、保険料を毎月払込む保険契約(月払保険、月掛保険)で企業や一般家庭を訪問して決められた保険料を集金するパート従業員のことです。集金業務のついでに保険の募集も行うこともあります。
ただし、委任契約によるものを除きます。
集金業務を兼ね行う月掛外務員
- 出勤義務が課されていること
- 毎月の賃金額が安定していること。
募集勧誘を行う外務員
専ら保険契約の募集勧誘に従事する者については、次の要件のすべてを満たす場合に限り、雇用保険の被保険者となります。
雇用関係が明確であると認められる者
- 出勤義務が課されていること。
- 業務の活動状況について報告義務があること。
- 兼業が認められていないこと。
- 毎月の賃金額が安定していること。
4.損害保険会社の外務員
損害保険会社の外務員は、通常、専ら募集業務に従事していますが、事業主の指揮監督を受けて労働に従事しなければならないことが多く、報酬のうち固定給の占める比率が高いので、一般には雇用保険の被保険者となります。
代理店を監督する外務員
損害保険会社のなかには、募集業務を保険代理店にのみ行わせ、外務員は保険代理店の監督を行うのみという場合もあります。この場合、外務員は保険会社の社員で、保険代理店は外部業務委託です。外務員については雇用関係は明らかなので被保険者となります。
簡易保険の外務員
簡易保険(月掛保険)を取り扱う損害保険会社で、簡易保険の募集に従事する外務員は、服務の態様、報酬の支払方法が生命保険の外務員と類似しているので、生命保険の外務員と同様に取り扱います。
5.証券業者の有価証券外務員
証券業者の外務員は、有価証券の募集、売買、または証券市場における売買取引の勧誘の業務に従事しています。有価証券や金融商品の取引業務のほか、信用取引・デリバティブ商品の案内・勧誘などの行為も行います。「外務員資格試験」に合格し、金融商品取引法(旧証券取引法)による登録を受け、日本証券業協会の協会員の会社に所属していなければ業務を行うことができません。
一般的には、事業主との間に雇用関係が存在することが多いので、雇用保険の被保険者となります。
なお、金融商品取引業者と業務委託契約をして活動する金融商品仲介業者(証券会社から独立して有価証券の売買の媒介等を行う代理店)は、被保険者ではありません。
6.教育訓練給付について
教育訓練給付を受けられるのは雇用保険に加入している労働者(被保険者)もしくは加入したことがある人だけです。労働者性が認められれば教育訓練給付対象者となります。
ただし、現在労働者でない場合であっても過去1年以内に労働者だった人は雇用保険に加入した可能性があるので教育訓練給付を受けられることがあります。