社会保険労務士試験・雇用保険法の過去問の解説です。テーマは「国庫負担、雑則」です。この分野からは過去に令和元年択一問7選択肢E、平成24年択一問7選択肢B,E、平成23年択一問7選択肢E、平成22年択一問7選択肢Aで出題されています。
1.社労士過去問分析
重要論点チェックテスト
「国庫負担、雑則」については、次の論点を押さえておくとよいでしょう。それぞれの質問をクリック(タップ)すると回答を見ることができます。
- Q教育訓練給付の支給に要する費用について国庫が負担することはありますか?
- A
いいえ。教育訓練給付の支給に要する費用については国庫負担はありません。なお、毎年度、予算の範囲内において、教育訓練給付の事務の執行に要する経費を負担します。
- Q職業訓練受講給付金の支給に要する費用について国庫が負担することはありますか?
- A
はい。国庫は、毎会計年度において、労働保険特別会計の雇用勘定の財政状況を踏まえ、必要がある場合には、当該会計年度における職業訓練受講給付金の支給に要する費用の一部に充てるため、予算で定めるところにより、その費用の一部を負担することができます。
- Q雇用保険事業について、労働政策審議会は関係行政庁に報告を求めることができますか?
- A
はい。労働政策審議会は、厚生労働大臣の諮問に応ずるほか、必要に応じ、雇用保険事業の運営に関し、関係行政庁に建議し、又はその報告を求めることができます。
- Q教育訓練給付の支給を受ける者の戸籍に関し、無料で証明を行うことはできますか?
- A
いいえ。求職者給付又は就職促進給付の支給を受ける者の戸籍に関し、無料で証明を行うことができますが、教育訓練給付の支給を受ける者の戸籍に関し、無料で証明を行うことはできません。
当サイト解説記事
社労士試験について
社会保険労務士試験について詳しくはこちらの記事をご覧ください。
2.令和元年択一問7選択肢E
令和元年(2019年実施、第51回)社労士試験、択一式試験・雇用保険法問7の選択肢Eです。
問題
択一式試験・雇用保険法(選択肢Eのみ抜粋) 〔問 7〕雇用安定事業及び能力開発事業に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。 E 国庫は、毎年度、予算の範囲内において、就職支援法事業に要する費用(雇用保険法第66条第1項第4号に規定する費用を除く。)及び雇用保険事業の事務の執行に要する経費を負担する。
正解
選択肢Eの記述は正しいです。
解説
就職支援法事業
就職支援法とは、「職業訓練の実施等による特定求職者の就職の支援に関する法律」のことであり、就職支援法事業は、雇用保険法第64条の職業訓練に関する事業のことです。
就職支援法事業と、職業訓練受講給付金の支給は雇用保険の能力開発事業として実施されています。
事務の執行は国庫負担
就職支援法事業に要する費用及び雇用保険事業全般の事務の執行に要する経費は、毎年度、予算の範囲内において国庫が負担するものとされています。ただし、職業訓練受講給付金に要する費用は雇用保険法第66条第1項第5号により2分の1と定められているため除かれています。
このことは雇用保険法第66条第6項に規定されており、選択肢Eの記述は正しいと言えます。
3.平成24年択一問7選択肢B
平成24年(2012年実施、第44回)社労士試験、択一式試験・雇用保険法問7の選択肢Bです。
問題
択一式試験・雇用保険法(選択肢Eのみ抜粋) 〔問 7〕雇用保険制度に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。 B 労働政策審議会は、厚生労働大臣の諮問に応ずるだけでなく、必要に応じ、雇用保険事業の運営に関して、関係行政庁に建議し、又はその報告を求めることができる。
正解
選択肢Bの記述は正しいです。
解説
労働政策審議会は厚生労働省の審議会の一つです。
厚生労働大臣は、雇用保険法の施行に関する重要事項について決定しようとするときは、あらかじめ、労働政策審議会に諮問しなければなりません。また、労働政策審議会は、必要に応じて雇用保険事業の運営に関し、関係行政庁に建議し、又はその報告を求めることができます。
選択肢Bの記述は雇用保険法第72条第2項のとおりであり正しいと言えます。
4.平成24年択一問7選択肢E
平成24年(2012年実施、第44回)社労士試験、択一式試験・雇用保険法問7の選択肢Eです。
問題
択一式試験・雇用保険法(選択肢Eのみ抜粋) 〔問 7〕雇用保険制度に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。 E 雇用保険法においては、国庫は、同法第64条に規定する職業訓練受講給付金の支給に要する費用の一定割合を負担することとされている。
正解
選択肢Eの記述は正しいです。
解説
職業訓練受講給付金は雇用保険の能力開発事業として実施されています。実際には、「職業訓練の実施等による特定求職者の就職の支援に関する法律」により実施されており、特定求職者が職業訓練を受講したときに生活支援として月10万円支給するものです。
職業訓練受講給付金の支給については、当該職業訓練受講給付金に要する費用の2分の1(ただし、割合については年度によって暫定措置がある)を国庫が負担するものとされています。このことは雇用保険法第66条第1項第5号に規定されており、選択肢Eの記述は正しいと言えます。
5.平成23年択一問7選択肢E
平成23年(2011年実施、第43回)社労士試験、択一式試験・雇用保険法問7の選択肢Eです。
問題
択一式試験・雇用保険法(選択肢Eのみ抜粋) 〔問 7〕雇用保険制度に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。 E 雇用保険事業の事務の執行に要する経費については、国庫が、毎年度、予算の範囲内において負担するものとされている。
正解
選択肢Eの記述は正しいです。
解説
教育訓練給付は国庫負担はない
教育訓練給付は国庫負担はなく、事業主及び被保険者が負担する雇用保険料だけで実施しています。
雇用保険の失業等給付のうち、高年齢求職者給付金、就職促進給付、教育訓練給付、高年齢雇用継続給付、雇用保険二事業(就職支援法事業を除く)の5つの費用については国庫負担がありません。
事務の執行は国庫負担
雇用保険事業全般の事務の執行に要する経費は、毎年度、予算の範囲内において国庫が負担するものとされています。このことは雇用保険法第66条第6項に規定されており、選択肢Eの記述は正しいと言えます。
6.平成22年択一問7選択肢A
平成22年(2010年実施、第42回)社労士試験、択一式試験・雇用保険法問7の選択肢Aです。
問題
択一式試験・雇用保険法(選択肢Aのみ抜粋) 〔問 7〕雇用保険制度に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。 A 教育訓練給付に要する費用については、原則として、その8分の1を国庫が負担するものとされている。
正解
選択肢Aの記述は誤りです。
解説
教育訓練給付は国庫負担なし
雇用保険の事業に関する費用は、事業主と被保険者が負担する雇用保険料と国庫負担でまかなわれています。その負担割合は雇用保険法第66条~第68条に規定されています。
教育訓練給付は国庫負担はなく、事業主及び被保険者が負担する雇用保険料だけで実施しています。したがって、選択肢Aの記述は誤りです。ちなみに、選択肢Aの記述にある「8分の1を国庫が負担する」のは雇用継続給付と育児休業給付です。
教育訓練支援給付金も国庫負担なし
この点について、教育訓練支援給付金についてはその給付の趣旨が求職者給付の基本手当とほぼ同じであるため、国庫負担が無いのはおかしいのでは?という議論があるようですが、今のところ教育訓練支援給付金についても国庫負担はありません。