社会保険労務士試験・雇用保険法(択一式試験)の過去問の解説です。テーマは「国、都道府県、市町村その他これらに準ずるものの事業に雇用される者」です。
1.重要論点チェックテスト
「国、都道府県、市町村の事業に雇用される者」については、次の論点を押さえておくとよいでしょう。それぞれの質問をクリック(タップ)すると回答を見ることができます。
- Q国は、雇用保険法の適用事業ですか?
- A
はい。国、都道府県、市町村その他これらに準ずるものの事業は適用事業です。要件を満たす一部の公務員が例外的に適用除外になるだけで、国、都道府県、市町村等は事業主です。
- Q被保険者が雇用保険法6条6号に該当する者になった場合、いつから資格喪失となりますか?
- A
雇用保険の被保険者が雇用保険法第6条第6号(公務員の適用除外)に該当する者になった場合は、該当するに至った日から適用除外となります。
- Q常時勤務に服することを要する国家公務員は被保険者となりますか?
- A
いいえ。国または行政執行法人について、国家公務員退職手当法第2条第1項に規定する常時勤務に服することを要する国家公務員または第2条第2項の規定により政令で職員とみなされる者は、諸給与の内容が雇用保険法第6条第6号に該当すれば適用除外となります。
- Q国の職員を雇用保険法の適用除外とするのに厚生労働大臣の承認は必要ですか?
- A
いいえ。国または行政執行法人については、国家公務員退職手当法第2条の職員(または職員とみなされる者)は、諸給与の内容が雇用保険法第6条第6号に該当すれば自動的に適用除外となり、厚生労働大臣の承認は不要です。
- Q都道府県の職員を雇用保険法の適用除外とするのに厚生労働大臣の承認は必要ですか?
- A
はい。都道府県又はこれに準ずるものの事業に雇用される者については、これらの長は、厚生労働大臣に適用除外の申請を行い、その承認を受けなければなりません(ちなみに47都道府県は厚生労働省告示によりすでに承認を受けています)。
- Q市町村の職員を雇用保険法の適用除外とするのに厚生労働大臣の承認は必要ですか?
- A
いいえ。市町村又はこれに準ずるものの事業に雇用される者については、これらの長は、厚生労働大臣ではなく「都道府県労働局長」に適用除外の申請を行い、その承認を受けなければなりません。
- Q市町村の長が適用除外の申請をした場合、承認を受けた日から被保険者資格を停止しますか?
- A
いいえ。都道府県、市町村又はこれに準ずるものの事業に雇用される者については、これらの長が適用除外の申請を行い、その承認を受けなければなりません。その申請があった場合は「申請をした日」に被保険者資格を停止します。
- Q雇用保険法の給付の内容を上回る退職金制度がある民間企業の労働者は適用除外ですか?
- A
いいえ。民間企業の場合、求職者給付及び就職促進給付の内容を上回るような退職金制度のある適用事業に雇用される者であっても、被保険者となります。
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社労士試験について
社会保険労務士試験について詳しくはこちらの記事をご覧ください。
3.過去問解説
令和2年択一問1選択肢C
令和2年(2020年実施、第52回)社労士試験、択一式試験・雇用保険法問1の選択肢Cです。
問題
択一式試験・雇用保険法(選択肢Cのみ抜粋) 〔問 1〕被保険者資格の得喪と届出に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。 C 雇用保険の被保険者が国、都道府県、市町村その他これらに準ずるものの事業に雇用される者のうち、離職した場合に、他の法令、条例、規則等に基づいて支給を受けるべき諸給与の内容が法の規定する求職者給付及び就職促進給付の内容を超えると認められるものであって雇用保険法施行規則第4条に定めるものに該当するに至ったときは、その日の属する月の翌月の初日から雇用保険の被保険者資格を喪失する。
解答
選択肢Cの記述は誤りです。
解説
雇用保険法第6条第6号では、「国、都道府県、市町村その他これらに準ずるものの事業に雇用される者のうち、離職した場合に、他の法令、条例、規則等に基づいて支給を受けるべき諸給与の内容が、求職者給付及び就職促進給付の内容を超えると認められる者であつて、厚生労働省令で定めるもの」を適用除外としています。「厚生労働省令」とは雇用保険法施行規則第4条のことです。
雇用保険の被保険者が雇用保険法第6条第6号に該当する者になった場合は、その前日までが被保険者であり、該当することになった日(当日)から適用除外となります。したがって、第6条第6号に該当するに至った場合には、その日に被保険者資格を喪失します。
このことは、雇用保険に関する業務取扱要領(行政手引)20604に記載されており、選択肢Cの「その日の属する月の翌月の初日から」とする記述は誤りです。
平成27年択一問1選択肢D
平成27年(2015年実施、第47回)社労士試験、択一式試験・雇用保険法問1の選択肢Dです。
問題
択一式試験・雇用保険法(選択肢Dのみ抜粋) 〔問 1〕雇用保険の被保険者に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。 D 国家公務員退職手当法第2条第1項に規定する常時勤務に服することを要する者として国の事業に雇用される者のうち、離職した場合に法令等に基づいて支給を受けるべき諸給与の内容が、求職者給付、就職促進給付の内容を超えると認められる者は、雇用保険の被保険者とはならない。
解答
選択肢Dの記述は正しいです。
解説
雇用保険法第6条第6号では、「国、都道府県、市町村その他これらに準ずるものの事業に雇用される者のうち、離職した場合に、他の法令、条例、規則等に基づいて支給を受けるべき諸給与の内容が、求職者給付及び就職促進給付の内容を超えると認められる者であつて、厚生労働省令で定めるもの」を適用除外としています。
ただし、国または行政執行法人の事業に雇用される者については、国家公務員退職手当法第2条第1項に規定する常時勤務に服することを要する国家公務員または第2条第2項の規定により政令で職員とみなされる者に限られます。
国家公務員退職手当法第2条第1項の職員として国の事業に雇用される国家公務員は、諸給与の内容が雇用保険法第6条第6号に該当すれば適用除外となります。このことは、雇用保険法施行規則第4条第1項第1号に規定されており、選択肢Dの記述は正しいといえます。
平成24年択一問1選択肢C
平成24年(2012年実施、第44回)社労士試験、択一式試験・雇用保険法問1の選択肢Cです。
問題
択一式試験・雇用保険法(選択肢Cのみ抜粋) 〔問 1〕雇用保険の適用事業及び被保険者に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。 C 都道府県の長が、当該都道府県の事業に雇用される者について、雇用保険法を適用しないことについて厚生労働大臣による承認の申請を行い、その承認を受けたときは、その承認の申請に係る被保険者については、その承認の申請がなされた日の翌日から雇用保険法は適用されない。
解答
選択肢Cの記述は誤りです。
解説
雇用保険法第6条第6号では、「国、都道府県、市町村その他これらに準ずるものの事業に雇用される者のうち、離職した場合に、他の法令、条例、規則等に基づいて支給を受けるべき諸給与の内容が、求職者給付及び就職促進給付の内容を超えると認められる者であつて、厚生労働省令で定めるもの」を適用除外としています。
ただし、都道府県又はこれに準ずるものの事業に雇用される者については、これらの長が厚生労働大臣に適用除外の申請を行い、その承認を受けた場合に限られます。
適用除外の承認の申請がなされたときは、その承認の申請がなされた日から(適用除外申請書が提出された日から)、適用除外とします。つまり、申請に係る被保険者の被保険者資格を停止します。適用除外の承認がなされたときは、申請の日から被保険者ではなかったこととなります。なお、適用除外をしない旨の決定がなされたときは、申請の日にさかのぼって被保険者であったものと扱います。
このことは、雇用保険法施行規則第4条第2項に規定されており、選択肢Cの「申請がなされた日の翌日」とする記述は誤りです。
平成22年択一問1選択肢E
平成22年(2010年実施、第42回)社労士試験、択一式試験・雇用保険法問1の選択肢Eです。
問題
択一式試験・雇用保険法(選択肢Eのみ抜粋) 〔問 1〕 雇用保険の適用事業及び被保険者に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。 E 国、都道府県、市町村その他これらに準ずるものの事業は、いかなる場合も適用事業とならない。
解答
選択肢Eの記述は誤りです。
解説
雇用保険法の適用事業は、「労働者が雇用される事業」であり、国、都道府県、市町村その他これらに準ずるものであっても、労働者が雇用される事業は適用事業です。
雇用保険法第6条第6号では、「国、都道府県、市町村その他これらに準ずるものの事業に雇用される者のうち、離職した場合に、他の法令、条例、規則等に基づいて支給を受けるべき諸給与の内容が、求職者給付及び就職促進給付の内容を超えると認められる者であつて、厚生労働省令で定めるもの」を適用除外としています。この規定は、「国、都道府県、市町村その他これらに準ずるものの事業」が適用事業であることを前提とした規定です。もし、適用事業でなければ、雇用されている者は全員、被保険者になりません。
適用除外とは、適用事業に雇用されているにもかかわらず被保険者とならない者のことです(労働条件が変われば被保険者になる可能性がある)。これに対して、適用事業ではない事業に雇用されている者は、初めから被保険者となる可能性がありません。
適用除外を受ける者と適用事業ではない事業に雇用される者は、区別しなければならないとされています。このことは、雇用保険に関する業務取扱要領(行政手引)23003に記載されており、選択肢Eの「いかなる場合も適用事業とならない」とする記述は誤りです。
平成19年択一問1選択肢A
平成19年(2007年実施、第39回)社労士試験、択一式試験・雇用保険法問1の選択肢Aです。
問題
択一式試験・雇用保険法(選択肢Aのみ抜粋) 〔問 1〕被保険者に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。 A 民間企業である適用事業に雇用された者は、雇用保険法の定める求職者給付及び就職促進給付の内容を上回るような退職金制度が存在する場合であっても、被保険者となり得る。
解答
選択肢Aの記述は正しいです。
解説
国、都道府県、市町村その他これらに準ずるものの事業に雇用される者のうち、離職した場合に、他の法令、条例、規則等に基づいて支給を受けるべき諸給与の内容が、求職者給付及び就職促進給付の内容を超えると認められる者は、適用除外となります。
しかし、「国、都道府県、市町村その他これらに準ずるものの事業に雇用される者」でなければ被保険者となります。求職者給付及び就職促進給付の内容を上回るような退職金制度が存在する場合であっても、被保険者となります。
このことは、雇用保険に関する業務取扱要領(行政手引)20352に記載されており、選択肢Aの記述は正しいです。
平成17年択一問1選択肢E
平成17年(2005年実施、第37回)社労士試験、択一式試験・雇用保険法問1の選択肢Eです。
問題
択一式試験・雇用保険法(選択肢Eのみ抜粋) 〔問 1〕雇用保険の被保険者に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。 E 特定独立行政法人の職員は、当該法人の長が雇用保険法を適用しないことについて厚生労働大臣に申請し、その承認を受けない限り、被保険者となる。
解答
選択肢Eの記述は誤りです。
解説
行政執行法人は、「国その他これに準ずるもの」です。国その他これに準ずるものの事業に雇用される者は、何ら手続を要することなく適用除外となります。適用除外について厚生労働大臣の承認は不要です。
このことは、雇用保険法施行規則第4条第1項第1号、雇用保険に関する業務取扱要領(行政手引)23101に規定されており、選択肢Eの「当該法人の長が雇用保険法を適用しないことについて厚生労働大臣に申請し、その承認を受けない限り、被保険者となる」とする記述は誤りです。